やる気を引き出す魔法の言葉「ペップトーク」とは?現場で使える声かけ術を紹介!

メンタル

選手の力を本番で最大限に引き出すには、技術や戦術だけでなく「言葉の力」が欠かせません。
部活動の試合前、スポーツ少年団の大切な大会、子どもたちの緊張はピークに達します。そんな時、どんな言葉をかけるかによって、結果が大きく変わることがあります。

本記事では、全国大会出場経験を持つ筆者が、長年の指導経験を通して実感した「やる気を引き出す言葉かけ=ペップトーク」について紹介します。スポーツ指導者だけでなく、保護者の皆さんにも役立つ内容です。ぜひ最後までご覧ください。


「本番に弱い子なんです」
「試合になると緊張して頭が真っ白になってしまう」
「練習では強いのに」
——そんな悩みを持つ選手を、あなたも一度は見たことがあるのではないでしょうか。

実は、多くの選手が実力を発揮できない原因のひとつが、「周囲の言葉の影響」です。

良かれと思ってかけた「失敗しないようにね」「気を抜かないで」は、選手の心にプレッシャーとして残ってしまい、不安を大きくしてしまうことがあります。

人は言葉によって勇気をもらうこともあれば、萎縮してしまうこともある——。
そんな繊細な心にアプローチする方法が「ペップトーク(Pep Talk)」です。


ペップトークとは、もともとアメリカのスポーツ現場で生まれた「短く、前向きな激励スピーチ」のことです。
心理学やコーチング理論をベースにした言葉がけの技術で、選手が自信を持って本番に挑むための支えとなります。

■参考になる研究・資料

  • たった1分で相手をやる気にさせる話術ペップトーク (浦上大輔:著) 
    本書ではペップトークの4ステップ「受容・承認・行動・激励」について詳細に解説されています。
  • スポーツ心理学の研究
     試合前のコーチの言葉が選手の自己効力感(self-efficacy)を大きく左右するという論文が複数存在します(例:Banduraの自己効力感理論)。
  • 教育現場での応用
     日本では企業や教育現場でも「ペップトーク」を取り入れるケースが増えており、「モチベーションマネジメント研修」の一環として活用されることもあります。

つまり、ペップトークはただの「励まし」ではなく、科学的な裏付けのあるメンタルアプローチなのです。


ペップトークは以下の4つのステップで構成されています。それぞれの役割と実例を紹介します。

①受容(事実を受け止める)

まず、相手の状況や感情を否定せずに受け止めます。
例:「相手は競合選手だ。勝てるかどうか不安に思ってしまうよな」
  「ここまで本当によく頑張ってきたな」
  「緊張しているのも、全力で取り組んできた証拠だ」

否定せず寄り添うことが大切です
心理的な状況、環境による状況を見て、選手がどのようなメンタルかを見ます。緊張や不安に思っている状況を否定せず、受け入れます。

②承認(努力や価値を認める)

選手の努力や成長を具体的に認めてあげることが大切です。
例:「きつい練習も投げ出さず続けた姿勢は本当に立派だった」
  「この日のために毎日本当によく頑張ってきた」

→これにより、自己肯定感と自信が高まります。
受容で一旦ネガティブな気持ちに寄り添います。しかしここから徐々に肯定的(ポジティブ)な言葉がけに切り替えていきます。これまでの選手の行い、努力を認め選手の自己肯定感を高めます。

③行動(これからどうするかに焦点を当てる)

過去ではなく、これからどう動くかを示す言葉に切り替えます。
例:「自分のリズムで、1本1本に集中しよう」
  「落ち着いて前に進んでいこう」
  「相手より先に仕掛けていこう」

→目の前の行動に意識を向けることで、緊張を減らします。
これからやるべき具体的行動を示します。そこで「◯◯してはいけない」等の否定形で指示しないことに注意してください。選手は「してはいけない◯◯」をイメージしてしまいますので、実際にやるべき行動のみ簡潔に言葉で伝えます。

④激励(背中を押す)

最後に、気持ちを奮い立たせる前向きなメッセージを送ります。
例:「お前ならやれる。信じてる」
  「思いっきり楽しんでこい!」
  「惜しみなくすべての力を出してくるんだ!」
  →選手の中に「よし、やってやる!」という気持ちが湧き上がります。


「受容」で一旦ネガティブな心に寄り添い、
「承認」で選手の自己肯定感を高め、
「行動」で具体的な行動を示し、
最後に「激励」で選手の背中を一押しします。


では、実際の現場でどう活用するのか?
以下にペップトークを用いた事例を紹介します。

【事例①】大一番を前にしたエースピッチャーへ

「ここまでよくチームを引っ張ってきたな。
ピンチでも諦めず投げ切った姿、みんな見てるぞ。
今日はお前の全力をぶつけてこい。楽しんで投げろ!」

→受容と承認で気持ちを安定させ、最後の一押しで心に火を灯します。

【事例②】試合前に緊張して固まっている1年生選手へ

「不安になるのは当然だよ。でもお前が選ばれたのは、毎日の努力を見てたからだ。
落ち着いて、やってきたことを出せば大丈夫。君はチャレンジャーだ。楽しんでおいで!」

→「できる理由」に目を向けさせ、緊張をワクワクに変える声かけです。

■大切なポイントは「普段からの信頼関係」

ペップトークの効果を高めるには、試合直前だけではなく、日々の関係性がカギです。
叱る・注意するばかりでなく、努力を認める・会話をする・笑い合う時間を意識的に作ることが、試合前の言葉に説得力を持たせます。
日常の選手と共に過ごす時間で信頼関係を築きましょう。選手は、自分を一番近くで見ていた人から、一番言ってほしい一言を言われることで、心に火がつきます。選手をよく見て信頼することが大切です。


ペップトークを学び、日常で活かすためのアイテムを2つ紹介します。
指導者や保護者の手元に置いておくと便利です。

たった1分で相手をやる気にさせる話術ペップトーク  浦上大輔:著

本書ではペップトークの4ステップ「受容・承認・行動・激励」について詳細に解説されています。

『子どもが本気を出す声かけ』田中ウルヴェ京 著

→スポーツ心理学に基づいた、子どもを前向きに導く声かけ事例が満載。保護者にもおすすめ。


ペップトークは、ただの励ましではありません。
相手の感情を受け止め、努力を認め、行動を促し、最後に背中を押す。
この4つのステップを意識するだけで、選手たちは本番で本来の力を発揮しやすくなります。

また、どんなに完璧な言葉を選んでも、信頼関係がなければ心には響きません。
日常のコミュニケーションの積み重ねこそが、ペップトークを生かす土台になります。

あなたの言葉で、誰かの人生が変わるかもしれません。
ぜひ、今日からペップトークを意識した声かけを実践してみてください。

コメント

タイトルとURLをコピーしました